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太古の昔より人類数百万年の歴史は、飢えを克服する歴史でもありました。数度にわたる氷河時代、狩猟採集による不安定な食生活を経て、長い年月の間、人類は農業、灌漑などの技術を貯えるとともに、食べ物を得られない時でも動けるように、脂肪組織という備蓄庫を設け、使わなかった栄養分を貯えるすべを身につけて来ました。脂肪組織は栄養分の備蓄庫以外にも、体温を維持する魔法瓶として、また体をぶつけたときはクッションとして働き、人体を守る大切な構造物でもあります。ほんの数十年前までは、ふくよかな人は一握りの貴族や豪商など、富裕層に限られ、肥満は豊かさの象徴でした。現在でも貧しい国々ではこの事実は変わりません。ところが、アメリカでは大戦後から、日本でも10数年前から、この豊かさの象徴が通用しなくなってきました。食べる方は栄養状態の改善を飛び越え栄養過剰になりました。産業構造の変化、電化製品の進歩、自家用車や交通網の発達によっ
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て運動不足も加速しました。そして、老若男女一億総肥満の時代が到来したのです。
(食べた熱量)-(運動した熱量)=(余った熱量)
この余った熱量がそのまま脂肪組織として体に貯えられます。ストレスの多い現代社会のシステムも過食や、夜食を大食いする遠因になっています。
肥満が豊かさの象徴だけなら喜ばしいことですが、過ぎたるは及ばざるがごとし。現在では過剰に脂肪がつく肥満は不健康の象徴です。肥満度と死亡率についてのある調査では、肥満度が20%を越えると、死亡率は正常体重者のおよそ1.2倍になり、肥満度が40%を越えると1.5〜1.6倍、50%以上では、2倍近くにも上昇するそうです。肥満には様々な病気が合併して命を縮めます。また、命が縮まなくても日常生活を不快にする体の不具合もきたします。脂肪組織は急激な人間社会の進歩によって、栄養を保存する備蓄庫から火薬庫に成り下がってしまったのかもしれません。
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