体重が減る場合

 体重の変化は、前述の体の組成や成分の増減を反映します。単純に考えると比率の高いものの変化が中心です。
1)短時間に体重が減る場合
A)脱水: 
数時間〜数日単位で体重が減る場合の多くは脱水です。1時間の激しい運動で1kg減ったと喜んでいる方がいますが、仮に60kgの人が10kmジョギングをした場合を考えると、600kcalの消費となりますので、およそ100gほど正味の体重が減る計算です。(体重1gあたり6kcal計算)もし1kg減っていたとすると900gが水という計算です。このように水の増減は、短時間に体重を大きく変化させます。60kgの方の細胞外液は20%なので12kg、外液は40%24kgです。短時間に変化するのは細胞外液ですので、900g12kg7.5%になります。(血管内の細胞外液は体重の5%程度ですので、3kgです。900gはその実に30%に当たります。)このように体重が短時間で減少する場合は、水分の大量の脱失を意味しますので、体のバランスを崩しやすく、イオン水などを飲んで、速やかに解消するのが得策です。お腹を壊し、下痢で体重が減ったときも同様です。
B)食事が摂れないとき:
 時間的には数日の単位で、お腹を壊して水分だけしか摂れない場合です。40才で60kgの男性が、食事が摂れず水だけ飲んで3日寝ていたと仮定します。基礎代謝量は22.3kcal/体重kgですので、22.3x 60x3=4014kcalとなります。寝ているだけでこのエネルギーを消費したことになり、4014/6=669gの正味体重が減ることになります。実際は2kg程度減っていることが多いので、この場合でも食事や飲水が不足することによる脱水の関与が大きいのです。
2)長期間で体重が減る場合
A)エネルギー消費が摂取を上まわる場合
甲状腺機能亢進症
:甲状腺ホルモンは、安静時の基礎代謝(エネルギー消費)を増やします。また、交感神経のβ1の働きを促進し、指先の震えをおこすなど筋肉

の無用な活動を増やしたり、心拍数を増やします。これら、骨格筋や心筋、内臓平滑筋(下痢)の運動をとおして必要以上にエネルギーを消費し、体重減少を起こします。ホルモンを補充し、適正なホルモン値を維持すれば、健康体重に戻ります。
ガン:ガン細胞は、正常な体細胞と異なり、細胞分裂・増殖が激しく、どんどん大きくなります。細胞分裂・増殖が活発なのは胎児も同様ですが、正常に育てば発育がコントロールされていますし、母胎の食欲も増すので体重減少につながりません。ガンは分裂・増殖が制御不能になるので、他へ使われなければならないエネルギーがガン細胞の増殖の材料として吸い取られてしまいます。中高齢者で理由もなく体重が減ってきた場合は要注意です。
B)正常なエネルギー消費が起こらない場合
糖尿病
: 食べ過ぎで太った人が糖尿病になると思われがちですが、糖尿病が進んで、細胞がブドウ糖を利用するときに必要なインスリンの分泌が激減したり、インスリンがきちんと働かないと、食事のデンプン質から変換されたブドウ糖は利用されず尿に排出され、脂肪や筋肉のタンパク質がエネルギーとして利用されやせ細ります。
C)エネルギー摂取ができなかったり、漏出する場合
胃腸に問題がある場合
:上部消化管であれば胃・十二指腸潰瘍などで、腹痛があり食事が食べられなかったり、慢性的な腸の疾患で食べたものが十分に吸収されない場合です。また、胃切除や膵臓の疾患で消化酵素が不足し、食物の消化が進まず、せっかく食べた食物の栄養が吸収されない場合もあります。また、小腸や大腸に炎症などがあり、粘膜表面から大切なタンパク質などが漏れ出てしまう、蛋白漏出性胃腸症などもあります。
D)廃用萎縮:体を使わないことで、使わないパーツが劣化することです。具体的には、寝たきりでいると足の筋肉がやせ細ったり腹筋がペラペラになり、体重減少につながります。高齢者が入院したときにしばしば見られる出来事で、入院中にしっかりと歩行訓練などをしておくと予防可能です。同様に加齢によって骨がもろくなってくると体重減少につながります。この運動器の衰えにより体重減少は、いくつものパーツの劣化が折り重なって起こっているのが一般的です。

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