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身近な感染症である化膿性皮膚炎、化膿性扁桃炎や副鼻腔炎、肺炎、膀胱炎や腎盂炎などの時に、細菌を殺すために使われる治療薬が抗生物質です。抗生物質は元々、微生物が生き残るため、周囲にいる他の微生物を排除するために生産し、まき散らす物質です。人体の表面に住むブドウ球菌を培養する際に、誤って培地に青カビ(ペニシリウム)が混ざってしまったところ、そのカビの周囲にブドウ球菌が生えないことが偶然わかりました。調べたところ、青カビはブドウ球菌を殺す働きを持つ物質を生産しており、この物質は後日、ペニシリンと命名され、抗生物質第一号として、1942年より医療の場で使われるようになりました。ちょうどそのころ勃発した第二次世界大戦で、負傷し感染症をおこした兵たちの命を救いました。続いて1943年には、土の中に住む放線菌の一種であるストレプトマイセスが結核菌を殺す物質を生産していることがわかり、その物質はストレプトマイシン(SM)と呼ばれました。それまで不治の病であった結核がSMの注射で治るようになったのです。 以後様々な抗生物質が発見されたり、人工的に作られ、戦後から昭和年代の医療の進歩はまさに、抗生物質と歩んできました。人類の命を縮めた多くの感染症が恐るるに足らなくなったのは、抗生物質の多大な貢献によるものです。しかし、あまりにもよく効くので、乱用されるように
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なり、昭和末から平成初めのころには、緑膿菌やMRSAなど細菌も抗生物質に対抗して耐性を持つようになり、新薬→耐性菌の出現→新たな新薬の開発→またまた耐性菌の出現と、いたちごっこになり、無秩序な抗生物質の投薬に批判が集まるようになりました。現在では、殺菌性のある抗生物質を、無用な場面で使わない、必要以上に使わないことが基本となっています。 さて、単なるDNAやRNAが入っているだけのウイルスは、寄生した細胞の中に入り、その細胞の機能を利用し増えますが、自力では生きていけません。単細胞生物の細菌は、@細胞壁や細胞膜をもち、A自分に必要なタンパク質を合成し、Bエネルギーを使って生活(代謝)し、C自力で自己の遺伝子を増殖させ、D1から2、2から4と倍々に分裂しながら増えていくなど、生き物として自立しています。この生物としての細菌の活動を邪魔すると、細菌は生きていけず死に絶えます。この邪魔をする物質が抗生物質です。なお、細菌の細胞としての活動は、人の細胞も行っています。そこで、人では行っていない細菌独自の活動を、そこだけ抑えるような薬であれば、人には悪影響がなく細菌だけを殺せますので理想的です。現在の抗生物質はこのあたりを狙って開発されています。
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