心不全の症状に気づく

 心不全症状の正体は前述した2つです。これを基本に見てみましょう
①循環不全よる体の酸素欠乏・栄養不足
息切れ
--坂道や階段を上ると息切れがする、平地を歩いても苦しくなり休んでは歩くの繰り返しになる等です。酸素の取り込みや全身への輸送が妨げられている症状です。COPDなどの呼吸器疾患や②に起因する胸水や肺水腫などが関与している場合もあります。
全身倦怠感
--漠然とした症状ですが、酸素欠乏や栄養失調をきたす循環不全の症状です。もちろん、糖尿病や神経・筋肉の疾患、肝硬変などの肝臓病、うつ病などの精神疾患その他、倦怠感をきたす他の病気を除外しなければなりません。
循環不全の症状
--血圧が下がって脈が触れにくくなる、手足の末端が冷たくなる、腎臓への血流が減り尿量が低下するなどの症状が出ることもあります。
②水分の輸送が滞り、あちこちに溜まる
 心臓が血液を送れないと、手前の静脈血が押せ押せ状態っとなって滞り、内圧が高まった毛細血管から血管外へ水分がしみ出します。
むくみ(浮腫)
--水は低きに流れるため、一日過ごした夕方には足の甲やすねに水が溜まります。反対に一晩寝ると足のむくみは引きますが、逆にまぶたの上など顔や手がむくんできます。水が溜まってむくむ場合は、その場所を指で押し込むとベコンとへこんで、しばらく元に戻らずへこんだままになります。(圧痕) なお、甲状腺機能低下症などタンパク質その他が溜まるむくみは、指で押してへこんだ部分はすぐ元に戻るので、圧痕は残りません。
肺うっ血--肺動脈、肺静脈に圧がかかると血液が滞り、肺がうっ血します。うっ血が進み肺の毛細血管から水がしみ出すと肺水腫になります。肺水腫は読んで字のごとく、肺の水ぶくれです。血液の中の酸素と二酸化炭素のガス交換を行

う場である肺胞の壁が水ぶくれすると、酸素の通過性が落ち、動脈血の酸素濃度が低下します。肺胞が水浸しになり、空気がガス交換の場に入らなくなることすらあります。
胸水
--肺の間質(血管と肺胞の間の隙間)に水が溜まる肺水腫も水が溜まる限界を超えると、肺と肺を入れる胸郭と横隔膜の間の空間である胸腔に水がしみ出ていきます。この胸腔に水が溜まることを胸水といいます。ここまで行くと、肺が水で押しつぶされ息を深く吸うことができません。このため少し動いただけでも強い息切れと動悸を覚えます。
 なお、肺のうっ血や胸水の共通症状は、息切れ、呼吸困難ほか、横たわると苦しくなるため、起きあがってハアハア荒い呼吸をする起座呼吸や、透明で水っぽい痰が出たり、薄い血液中の酸素をできるだけ体の隅々まで行き渡らせるため心拍の回転数を上げて起こる頻脈や動悸などです。
肝臓うっ血や腹水--循環系の圧はお腹の臓器にもかかります。このため、大静脈につながる肝臓がうっ血し腫れてきて、右肋骨付近に鈍痛を覚えることがあります。また、肝臓の表面や腸管から臓器の外(腹腔)へ水がしみ出て腹水が溜まります。腹水が溜まるとお腹がボヨンとふくらみ、胃が圧迫され食欲がでません。もちろんお腹がつかえて深呼吸もできません。
体重増加
--これら水が溜まった症状がある時は当然体重が増えていますので、普段の体重を知っておくこと、心不全が疑われるときは体重を測定し増えていないか確認することが重要です。
頭痛
--高山病の時は低酸素血症と、気圧の低下による脳浮腫(脳のむくみ)によって頭痛が起こります。心不全の時も低酸素の、脳のむくみをきたす状態なので、高山病と同様に頭痛を覚えることがあります。






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