関節リウマチの早期診断

 以前は、慢性関節リウマチを診断するため、1987年にアメリカで作られた、「 慢性関節リウマチ分類」を使っていました。(下に抜粋)
--------------------------
1.朝のこわばり
2.3ヶ所以上での関節炎
3.手関節炎
4.左右同じ関節に炎症があること
5.リウマトイド結節がある
6.血清リウマトイド因子
7.X線異常所見
*分類上、これらの7項目のうち少なくても4項目について該当している場合、慢性関節リウマチ(RA)とみなす。
(1〜4は6週間続く  1987年)
--------------------------
 これは、リウマチ分類と書かれているように、治療を目的とした診断ではなく、
該当する患者さんをリウマチと分類し、研究対象にしましょうという、医学研究を目的とした基準でした。このため、確

実にリウマチである患者さんを選び出すことを優先したため、炎症が進んで関節が壊れた結果であるリウマトイド結節や、X線異常所見(骨、関節の破壊像)、左右対称性などが入っており、早期のリウマチの診断には役に立ちませんでした。リウマチに分類された時には、関節に変形が起きていて手遅れだったのです。
 治療法の進歩により、1987年の基準は時代遅れとなり、早期診断と後遺症を残さず早期治療に結びつける診断基準として出てきたのが、
2010 ACR/EULAR分類基準です。
 大きな違いは、早期診断に役立つと言われている、抗CCP抗体が導入されたこと、また、RF(リウマチ因子)や抗CCP抗体の値でメリハリをつけたこと、手遅れになった時のリウマチの関節所見(変形の所見)をあらかじめ除いたことです。これらの見直しで、関節に変形をきたす前にリウマチの診断をすることが可能となり、後遺症に悩む人々を減らすことができるようになりました。また、表からおわかりのように、血液検査と診察所見が中心なので、免疫学的な治療を含め関節リウマチは整形外科の疾患から完全に内科の守備範囲となりました。
 我々内科の臨床医は、様々な病気や症状の訴えを真っ先に聞く立場にあり、"これは関節リウマチではないのか?"というアンテナを常に張っています。気になる方はまず一度、手を見せてください。

2010 ACR/EULAR分類基準

関節リウマチの診断(2010 ACR/EULAR分類基準)
1)1ヶ所以上の関節に明らかな滑膜炎が
 あり、滑膜炎を起こすSLE, 乾癬, 痛風
 などの疾患がないこと
2)以下のA,B,C,Dの合計点が6点以上の場合
 1)、2)を満たせば、関節リウマチとしてよい

A 罹患関節   
 大関節1ヶ所  0 点* 大関節:肩、肘、股、膝、足
 大関節2〜10ヶ所 
1点 
 小関節1〜3ヶ所  
2点 
  
* 小関節:PIP(指第二), MCP(手指第三),
     2-5MTP(足ユビ第三), 手首
 小関節4〜10ヶ所 3 点
 11ヶ所以上(1ヶ所以上の小関節) 
5点
    * ここに、顎・胸鎖・肩鎖関節を含めてよい
B 血清学的検査   
 RF(-)かつ抗CCP抗体(-)  0点
 いずれかが低値陽性
(正常上限3倍未満)  2点
  いずれかが高値陽性
(正常上限の3倍以上) 3点
C 急性期反応物質   
  CRP正常かつESR正常  0 点
  CRP、ESRのいずれかが異常 
1点 
D 症状の持続   
 6週未満  0 点
  6週以上  
1 点

関節リウマチの変遷 | 関節リウマチの早期診断 | 関節リウマチ治療の考え方 | 期待できる新薬