ランニングマガジン クリール 17年8月号 リーダーズレポート 

アッという間に駆けめぐった     神奈川県 山口 泰


 ダイエット目的に始めた孤独な3キロのジョギングを半年続けた頃、友人に10kmレースに誘われた。大丈夫かなと思いましたが、走りきることができ、興奮さめやらぬ翌日には書店でクリールを手に入れていた。トレーニング法やストレッチの仕方など、ためになる情報が満載でしたが、グイグイ引き込まれるようにして読んだのが、まだ見ぬコースを走り抜いた皆さんが書いた“クリール読者のレースレポート”クリクリ倶楽部でした。1月号を手に入れてから数ヶ月、ハーフマラソンを2度ほど走ったあと、新婚旅行で訪ねた美しい街バンクーバーで
GW中にマラソンが行われることを知り、ネットで調べ、レースに誘ってくれた友人と連れだって出かけました。

計画は出遅れたものの切符も首尾良く手に入り、レース前日、森と波止場と山々に囲まれた街バンクーバーに到着しました。朝7時スタートなので前日は早く休み、時差ぼけで眠い目を擦りながら5時に起床。買い置きしたパンと飲み物で朝食を済ませホテルの玄関へ出ると、既にランパン姿の外人さん達が会場へと向かうタクシーに乗り込んでいるところでした。


会場はBCプレイスというアイスホッケースタジアムです。6時前に着き登録を済ませ、記念のTシャツを貰い、20分前にスタート地点へ向かうと既に人人人です。スタート前の興奮をかき立てるように人混みのあちこちでビーチボールが天に打ち上げられ、待つこと10分少々、いよいよ6000人を越すハーフのスタートです。最初はスタジアムを一周しお祭り気分が抜け、下り坂にさしかかったところでスピードアップした。都心に隣接した瀟洒な住宅街の切れ目付近から何やら漢字のポスターが目立つようになりチャイナタウンが始まった。小さな起伏をこなしていると石畳が敷き詰められたギャスタウンという旧繁華街へ入り、高層ビルが建ち並ぶ市街地を抜けると急に視界が開け、ヨットハーバーの対岸には雪をかぶった山並みが見えた。スタンレー公園にはいるとカナディアンインディアン特有のトーテムポールが立ち並ぶ。ノースショアへ渡る架け橋、ライオンズゲートが見えると約半分。「いや、もう半分も走ったの?」という感じ。しかし、これからが200フィートを一気に登る急坂が待ち受けている。坂を走るのは初めての経験なので、直前のエイドで配られていたバーとオレンジを頬張り少し元気が付いたところで登り始める。苦しいかなと思っていた坂道も針葉樹の大木に包まれ、まるでハイキングコースのような感じでした。森林浴効果か、苦しいと思う間もなく頂上に達し、下りもカナダの森を海辺へとダウンヒル。一気に駆け下りたところで、海辺に芝生の散歩道、ベンチには街の人々が日向ぼっこという北米らしい公園をゆく。生活道路となっているいくつかの橋を過ぎると最後の登りに入る。再び都会へと戻るとスタート地点のプレイスが見え、ラストスパートを。ゴールを越えると待ち受ける市民に完走のメダルを首にかけられる。

走り終わった消耗を癒してくれたのは、食べ放題、飲み放題のエイドでした。様々な果物あり、パンやクッキーあり、ジュースやヨーグルトにスポーツバーなどなど。しっかりエネルギーを補給したあと今日のレースを友人と振り返る。北米ではピカイチ清潔で安全な都心、異国情緒溢れるチャイナタウンやダウンタウン、美しいヨットハーバーからかいま見る氷河で削られた山々。そして、登りの苦しささえ忘れてしまう森の坂道。時の過ぎるのも忘れ、カナダの美しいところを一時間半であっという間に巡ってしまう小旅行がこのバンクーバーマラソンでした。その上、翌日はもう一つのお楽しみ。MTBのメッカ、ノースショアをレンタルバイクで走り、大満足のマラソン旅行でした。気候よし、景色よし、人もよし、食もよし、そしてマラソン以外のアトラクションもよし。来年も是非参加しようと誓い合って帰りました。